花咲くいろは
人にものを教えるときにはどうすればいいのか。この疑問は、洋輔のように人の上にたつ人間ならば、一度はぶつかる悩みだろう。きつすぎれば、辞めてしまう。優しすぎれば、だらけた関係になり、仕事としての機能を果たさないかもしれない。
緒花の仕事の覚えさせられ方は、「女将ビンタ」だった。これは、緒花たちが宿泊した「福洋」のしつけよりも厳しいものだ。それでは、なぜ緒花や辞めなかったのだろう。それは、仕事を好きになることができたからではないだろうか。
結名は洋輔に、「なぜ、そんなに大変なことをしているのか。もっと自分に合った仕事があると思わない。」と問いかける。それに対して、洋輔は、「確かに、朝はきついし、休みはないけれど、そんな仕事にも楽しいことは見つけられるもの。働いたことない結名にはわからない。」と答えた。物事の本当の楽しさというのは、本気になって取り組んでみて初めて分かるものだ。
緒花は、はじめから本気で仕事に臨んでいた。だからこそ、仲居の仕事の楽しさを知ることができたのだろう。それに対して、福洋でアルバイトをしていた仲居さんたちは、アルバイトだからという義務的に気持で臨んでいた。だから、仕事の楽しさを知ることができなかったのだろう。
しかし、これは、福洋という旅館自体にも責任があるように感じた。福洋は、人件費削減のため、固定の仲居ではなく、アルバイトを雇っていた。そして、そのアルバイトには、ずっと働くわけではないという理由で、さほど期待もせず、軽んじていた。これでは、本気になるにもなれないのではないか。
もちろん、本気になることも、仕事を楽しむことができるようになることも自分次第である。また、期待しなくても良い、軽く扱うことができるから、アルバイトを雇うということもあるだろう。しかし、上に立つ人が下の者に期待をするならば、単に仕事をどのように教えるかに悩むのではなく、まずは、仕事の楽しさを知ることができる環境をつくることから始めることも良いのではないだろうか。